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経営危機管理

経営危機管理

『Brand 2020』へようこそ!今回は、グローバル企業の危機管理についてお伝えします。外資系企業が日本で成功するには、どのような人事力が必要なのでしょうか?日系企業とは異なる危機とは?

[全文は以下の通り]

デイビッド: こんにちは、デイブ・ラッセルです。Brand 2020にようこそ。このシリーズでは、日本が国内外にどのように自国を見せているか話しあいます。本日のゲストはティム・ラングリーです。ティムは日本に長く住んでますよね。日本のビジネスでたくさんの事をご覧になったでしょう。特に日本市場に進出して、様々な問題に直面した外資系企業について多くのご存知でしょう。前回のBrand2020では、問題の一つとして、外資系企業は日本の政府にロビイングするのが得意ではないので、規制などの問題に陥るという点について話しました。 この問題についてはもう話したくないですね。しかし在日外資系企業が陥る問題として、海外の人々にあまり知られていない問題を議論する必要があります。その一つが、日本にオフィスを構える外資系企業が、よく海外の本社とのコミュニケ―ションで抱える大きな問題です。時には言語に関する問題ですが、ほとんどの場合そうではありません。ビジネスにおける文化の違いからくるもので、本社との円滑なコミュニケーションに支障が出ます。

ティモシー: 興味深いことに、国が違うと異なるビジネス文化があります。イギリスでは本社から管理職を送りこみ、会社の存在を示すとともに、通常自国の人材で国内外をまかなうためです。アメリカ人はもう少し平等です。オーストラリア人もです。お話になっていた、現地の市場への移動についてですね。本社と日本支社のコミュニケーションがうまくいかないのは、雇われた人が現地の人で、本社からの人でないからかもしれません。彼らは本社がある国の文化や、の方法にはあまりなじみがありません。

デイビッド: はい、多くのケースを見てきましたね。あなたもそうでしょう。子会社でも支店でも、本社が社員を日本のオフィスに送りこむケースを知っています。会社が送り込む人材はとても優秀かもしれません。ただその人は日本語を話せるかわかりません。日本のビジネス文化を知っているかもわかりません。ここでよい仕事をしようとベストを尽くすでしょうが、重大な問題に巻き込まれてしまうでしょう。日本の社員はその人とうまくコミュニケーションが取れない上、信頼しませんから。「あの人外国人だし」と言って。日本に派遣された海外からのビジネスマンが実は有能ではなく、日本でのビジネスがうまくいかず、海外の本社に失敗を隠そうとしたケースをいくつか見てきました。最近はそのケースがより多いですね。同意してくださると思いますが、日本のCEOは子会社や支社を経営しています。彼らの仕事は海外の本社にレポートをすることですが、自分勝手に会社を経営し、会社の資金を使い、本社へのレポートはほとんどしません。結果として、彼らは会社での出来事、会計上の失敗、売り上げの伸び悩みなど様々な問題を隠そうとします。このようなケースは多くなっていますか?

ティモシー: 多くなっているかはわかりませんが、これは日本のビジネスの構造の一部です。なので、あなたが新卒の日本人だとすると、入社して最初の仕事は同期の社員や2、3年上の上司と同化することです。あなたの後輩ともそうです。仕事を学ぶのではなくて、チームと同化するんですね。チームから置いていかれたり、追い出されたりしたくないですからね。みんなと足並みをそろえたいのです。このような同化はキャリアの中ずっと続いていきます。支社や子会社を経営するために転職してきた社員がいるとすると、その人はチームに同化し、転職も1、2回します。転職はとてもよくないことでしたが、今は違います。転職したCEOやCFOがいますから。過去10年間で4、5回仕事を変えるなど聞いたことがないことでしたからね。本社と支社がうまくいかないのには言語の問題だけでなく、会社での自分のポジションを確立するということもあるのです。みんな首になりたくないですから。周りの人に尊敬されて、褒められたいですから。これが問題になります。

デイビッド: その通りですね。外資系企業は、この問題にどうやって対処するか苦しんでいます。もしあなたがアメリカやヨーロッパから会社を運営していたらどうしますか?そして日本支社が、CEOが海外から雇われようが日本で雇われようが、しかるべき形で運営されていないとしたらどうしますか?日本支社の運営に突然信頼を失うのです。この危機的な状況であなたはどうしますか?

 

ティモシー: そうですね。どの会社にとってもとても難しい状況です。あなたや株主が日本支社の運営のために人材を雇ったのです。なので、支社を運営している人は従業員ではありません。株主たちが支社を運営のために選んだので、CEOは株主に報告して、株主の期待に応えます。契約が終了する頃(多分2、3年)に、株主たちが年次総会を開いてそのCEOの進退を決めます。仮にCEOがうまくやっていなかったり、期待に沿えなかったり、信頼を裏切ると、株主たちが退任を決めます。CEOは社員ではないので、雇用規約が異なります。CEOには任期があり、株主次第でCEOは自主退職するか、無理やり辞任させられることもあります。

デイビッド: 実際に外資系企業が日本支社の運営に信頼をなくし、極端な行動を取らざるを得ない場面に遭遇したことはありますか?

ティモシー: 一般的にはよく話題になりませんが、私たちのような人がビールを飲んで一緒に噂話をしているとき、いつも話題になります。とても有名な話で、悪事を働くCEOや日本支社での出来事を、本社が管理できないという話もあります。現実的に、本社は日本の出来事を本当に理解していないうえ、日本支社の人間を常に批判します。そして「日本でのビジネスは難しいと言わないでほしい。海外とは違う方法でビジネスをする必要があるなんてもう聞きたくない。私の望む方法でやってほしい。」と言うのです。文化やビジネス倫理で、常に対立があります。

デイビッド: 悪いCEOについてお話くださいましたが、これはマネージャーにとっては悪夢ですね。

ティモシー: はいそうです。

デイビッド: もし支社運営をする人間が勝手にふるまい、自分の領地を作り始めたら何が起こりますか?首にできますか?本社が決めたCEOですよ。

ティモシー: 本社の者が来日し、CEOを解雇するまでにはいくつか問題があります。しかし、代表取締役としてのCEOの名前は会社の記録に残ります。なのでビジネスを支える人々、銀行などは、その人が5年在職したのち、会社に解雇されたことを知っています。他のCEOは3年いて解雇されたなどと言うことは、会社記録に残ります 。なので会社に近しい人、顧客そしてサプライヤーはこれを知っており、変化の激しい経済では、ビジネスをやっていくのは大変です。日本はとにかくビジネスをやるのが大変な場所です。外国人となると、より多くの苦労があるでしょうし、もし間違った人を雇ってしまったり、その人を信頼できなくなったり、よく起こるのは、CEOが本社から給料をもらいつつ独立した会社を設立することです。そのような事態が発見されるとCEOがすぐ解雇される理由となりますが、そのプロセスはとてもデリケートです。たくさんのシナリオが考えられますが、結果がよかろうが悪かろうが、本社はCEOに自主退職してほしいのです。裁判沙汰にしたくないですし、法律家にもかかわってほしくないのです。本社は、CEOがなぜ本社の要求に対応しないのか、なぜその人がCEOとしては有能ではないかを本人に知らせたいのです。CEOには退職金を支給してでも退職してもらいたいのです。理由をつけて解雇するよりも。なぜなら、本社が株価を数えている間にCEOは、自分の領地を管理しています。なのでとても困難な仕事なのです。CEOを解雇したら、会社の組織が崩壊するかもしれません。

デイビッド: えぇ、この件についてあなたはかなりの経験をお持ちのようですね。経験からお話されているのですね。お客様である会社の名前を公表できないのは承知していますが、実際何が起こっているかについての内情を教えていただけますか?日本のCEOが横暴なふるまいをはじめたら何が起こりますか?

ティモシー:  だいたい、「日本のCEOが横暴にふるまっているかもしれない。よくわからないが、噂に聞いている」という連絡を受けます。CEOや株主のもとへ匿名で中傷的な手紙がきたので、確認してほしいと。なので私たちは徹底的にまで調査をします。それは立証可能か、調査価値があり、信ぴょう性があるのか。そうであれば、お客様にご連絡をして、ほとんどの場合は調査依頼がきます。調査をしたとき、ほとんどの場合何かが見つかります。悪事の決定的証拠があるんですね。私たちの仕事は、問題の重大さを調べることです。事の大切さや重大さを、顧客になるかはわからなくとも、株主にご説明し、選択肢をご提示します。しばし選択肢として、うまく解決するシナリオの必要性があがります。問題があまり報道されていないので社員は比較的落ち着いています。しかし私たちはこの問題を解決します。なぜならこの問題は、表面化してなかっただけでずっと滞在していたからです。大概問題は1つではなく、多く存在しており、表面化して誰かが解決するのを待っているのです。

デイビッド: 分かりました。非常に興味深いですね。実例を紹介していただけますか?思いついたもので結構です。最近のケースで、どのようにそれを解決したのか知りたいです。そうすればよりこの件をわかりやすいでしょう。

ティモシー:  わかりました。その前に、ここから成田までの道には、今日お話した問題に対応できず、ダメになってしまい、廃業してしまった会社でいっぱいです。日本で長く経営する会社はどこも、何らかの形でこの問題に苦しんだでしょう。だいたい、2年か3年日本に赴任し、奥さんが東京アメリカンクラブに行くような本社の人間に起こる問題ではありません。問題が起こるのは、次かその次の世代です。そしてほとんどの場合、中堅の日本人CEOが問題です。CEOに指名されたか、CEOのポジションにいて新しい地位に引き抜かれたパターンです。手っ取り早く自分の領地を作り始めます。現在このような事は予測や理解ができます。ショートカットで仕事を早く終わらせ、自分の周りを信頼できる人で固めることができ、いつでもその人たちと連絡できますら。

デイビッド: 本社は問題視しないんですか?

ティモシー:  問題視しません。問題は社内で密約を交わし始めた場合です。いつもお金についてです。自分を雇ってくれた会社やクライアントを犠牲にして、自分の私欲を見たすのです。私が最近経験したのは、日本人のCEOが関係したケースです。3代目社長でした。その会社は15年日本で経営しており、45人ほど従業員がいました。アメリカの会社ではなく、ヨーロッパの会社で、何かがおかしいとわかるサインがいくつかありました。調査をすると、状況は決して良くなく、深刻な問題があると発覚しました。株主は問題を確かめるために日本にやってきました。直接調査をしましたが、会社はすぐに崩壊しました。しかしそれもコントロールされたものでなくてはいけません。CEOはこう言うでしょう。「わかりました。辞任します。あなたは私を告訴するわけではないし、酷評する事で私がまたこの地でCEOになれないようにすることもないでしょうし。でも、私は退職します。すべての不正手段で得たお金について自分の非を認めないし、あなたもそれについては言及しないでください。このことは水に流しましょう 。」このようなことは頻繁に起こり、悩みのタネになります。しかし会社としては、崩壊するにしてもコントロールしたいもので、すぐに後任を探さないといけないのです。問題は、CEOや代表取締役として役所に行き、新しい代表取締役を指名できるようにすることです。後任がいる場合でも(いない場合が多いですが)登記変更は長いプロセスです。後任がいない非常に不安定な状態の時には、第三者の介入が必要です。私たちはそのような会社に赴き、オフィスを管理し、社員の緊張を解いて通常通り仕事ができるようにします。そしてサプライヤーと消費者が会社は大丈夫だと感じるようにします。悪い事はもう終わったんだと。それから新しい後継者を探して、株主に提案するのです。5〜6か月かかるインタビューを経て代表取締役が退職する変換期があるのです。誰かが代表取締役にならないといけません。日本の会社では2人代表取締役になれます。普通は本社の人と、日本で経営をしている人です。日本で支社を経営している人は、社員や商品のサプライヤーに自信をくれるような人でなければいけません。新しいCEOがやってくると、私たちは会社を去っていきます。このプロセスは長く、約6〜8か月かかるんです。

デイビッド: それは私が思ったよりずっと複雑ですね。つまり海外の本社から連絡を受けて、日本支社の調査を行い、問題があることが発覚したら本社に報告をし、本社があなたに全面的な調査をするように頼むのですね。そしてあなたが調査をすると。最終的には、原因を見つけたら、現職の日本のCEO、代表取締役と協議して、裁判するより彼に辞任するように説得するのですね。問題が新聞沙汰にならず、できるだけ大ごとにならないようにするためですね。そして、問題があったCEOから新しいCEOへの変更をサポートを行う。もし会社の重役やほかのスタッフを変えないといけない場合、どうするんですか?

ティモシー:  私たちはその問題にも対応いたします。

デイビッド: そこまで行うのですね。要するに、会社の大損失を止めて、必要ならばそこを訪れ、すべての問題を起こしているCEOを会社から取り除くんですね?そしてCEOを他の人にすると。長い上複雑なプロセスですね。

ティモシー:  はい、長いプロセスです。

デイビッド: 例えば、外資系企業は日本でいくつかの会社を使って同じような結果が得られませんか?探偵会社や、弁護士事務所、法廷会計事務所の会社など、一気に雇えばいいのではないでしょうか?

ティモシー:  そうですね。お決まりの反応は法律会社を雇おうということだと思われます。しかし私の経験から言うと、雇った会社が協調するようにうまく使うには、非常に多くのお金と時間が必要になります。十中八九いいとこ取りはできず、うまくいかないでしょう。

デイビッド: ティモシーさん、今日はありがとうございました。なんとなく聞いたことあったけれど、あまり知らなかったことを理解するきっかけになりました。たくさんに外国人の方も同じように思っているはずです。ティムさんは、この問題について経験が豊富で、たくさんの人が知らない問題を取り扱っているようですね。またこれは、私たちが知っておくべきことですね。

ティモシー:  興味をもっていただき光栄です。これは私たちが扱う興味深い問題の一部です。企業の危機管理はみんながやりたいと思うようなものではないですが、日本に住んでビジネスをやっていて魅力的だと感じるものの1つです。なぜなら人は、どこかの時点で問題にぶつかるからです。

デイビッド: その通りですね、ありがとうございました。Brand 2020は、日本の仕組みや、どのように日本が自国をみせているのか、日本の複雑さになれていない海外の方にもわかりやすくご紹介します。今後のエピソードにもご期待ください。